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興の乗った様子のない男であっても、心のどこにも傷つかず、抱き返すことができる。
麻痺するほどにこすりあげられた内側の熱のせいで、俺はゆさぶられるままに少しだけ精液をはなった。
王は動きを止めて、ぬるんだ水を塗り込めるようにひくつく性器の先に押し込める。
射精したばかりのそこをいじられる刺激に、ぞわっと鳥肌が浮く。
「は、それ、やめないで」
声をあげてひどすぎる快感を逃がそうとしたけれど、腕を押さえられてやわらかく性器の裏すじをこすりあげられる。
あわせた肌の感触でそれがひどく優しく感じられて、別の男に抱かれているような気さえした。
身体の内にとどまっていたペニスすらゆるく出し入れされて、それまでとは違う気遣うような性交に目まいがしてくる。
そんなものは経験がなかった。
じゅうぶんに熱くなっていた内側が熱いかたまりを黙って受け入れる。奥までいかずにずるりと生々しく引き抜かれて、焦らすように浅いところでの抽挿を繰り返される。
「う、っん」
途方もない快感に背筋が凍えた。
これと同じものを知っている。
ギルに触れられたほおが急にこそばゆく感じられて熱をもった。
くらくらと意識をかき混ぜられる中で顔を近づけられて、蔑むものとは違うまなざしに息をのむ。
「愛している、セージ」
薄っぺらの身体にすり込むように、深い声でささやかれる。
意味をなさなかったそれは、やがてゆったり身体中に行き渡って、吐精と同じくらいの快感を呼び起こした。
放り出した足の指の先までしびれる。
俺は取り返しのつかない赤い顔で王を見上げたが、予想の通りに酷薄な笑みを浮かべた男がいた。
「やっとこちらを向いたか」
黒いものを含んだ声音だった。
わなないたあとで、快感とも恐怖とも違う生理的な涙がこぼれた。ゆがめられた顔に満足したのか、青の王は「おまえはそういう表情が一番似合う」と言った。
簡単にもてあそばれる自分が、みじめだった。
「愛情に飢えた人間は、物足りないほど簡単に落ちる。少しばかり優しくされたからと、素性もわからぬ者たちに妹を託したのは、確かにおまえの罪だ」
言葉の全部が針のようだ。
「うっ、うえっ」
本能的に身体が男を拒否したが、押し返す腕は、赤ん坊ほどの力も入らなかった。
身体にだったら、なにをされてもあきらめられた。心の一番やわらかいところをえぐり取られて、俺は声を上げて泣いた。
死んだらいいのにと願う。青の王は俺の髪にくちびるをうずめて、小さく笑った。
「ヒソク、倍ほど生きている男を手玉に取るつもりなら、気を散らしても抱いてもらえるとうぬぼれるのはやめろ」
やがて泣き声を聞くのにも飽きたのか、処女のようにこわばった身体を押し開いて行為をはじめた。
明け方の、うっすらとした明かりの中で目が覚めた。
人の気配にぎくりとしたけれど、かたわらに横たわっているのは、昨夜さんざん見た顔で、俺は身体を少しだけ離した。
背を向けて外をながめる。まだ薄暗く鳥の鳴き声もしない静かな朝だったけれど、部屋の外には侍従が控えている気配がする。
王の部屋で眠ることを許されるとは思わなかった。
はあ、とため息をついて、青の王が目覚める前に部屋へ戻ろうと思いついて上体を起こした。
服を着ていなかったのは初めてのことで、一瞬言葉を失う。宮殿に来てからはそれまでの習慣が麻痺しているなと、あらためてうんざりした。
ふと違和感を覚えて、もう一度見下ろした身体はどこかがいつもとは違った。
「え、ティンクチャーが」
ない。胸から青い羽のしるしが消えている。浅黒い肌は王宮に来る以前のもので、久しぶりに俺だけの色だった。
呆然としてしばらくぽけっとそれを見つめたあとで、言いようのない悪寒が背筋をかけあがってきた。
身体がふるえだして止まらなくなる。
俺は眠っている青の王を見た。
そうして、すぐそばについていた自分の手に視線をうつした。
力を込めて布を握りしめていた手の甲には、緑のティンクチャーがしるされていた。
麻痺するほどにこすりあげられた内側の熱のせいで、俺はゆさぶられるままに少しだけ精液をはなった。
王は動きを止めて、ぬるんだ水を塗り込めるようにひくつく性器の先に押し込める。
射精したばかりのそこをいじられる刺激に、ぞわっと鳥肌が浮く。
「は、それ、やめないで」
声をあげてひどすぎる快感を逃がそうとしたけれど、腕を押さえられてやわらかく性器の裏すじをこすりあげられる。
あわせた肌の感触でそれがひどく優しく感じられて、別の男に抱かれているような気さえした。
身体の内にとどまっていたペニスすらゆるく出し入れされて、それまでとは違う気遣うような性交に目まいがしてくる。
そんなものは経験がなかった。
じゅうぶんに熱くなっていた内側が熱いかたまりを黙って受け入れる。奥までいかずにずるりと生々しく引き抜かれて、焦らすように浅いところでの抽挿を繰り返される。
「う、っん」
途方もない快感に背筋が凍えた。
これと同じものを知っている。
ギルに触れられたほおが急にこそばゆく感じられて熱をもった。
くらくらと意識をかき混ぜられる中で顔を近づけられて、蔑むものとは違うまなざしに息をのむ。
「愛している、セージ」
薄っぺらの身体にすり込むように、深い声でささやかれる。
意味をなさなかったそれは、やがてゆったり身体中に行き渡って、吐精と同じくらいの快感を呼び起こした。
放り出した足の指の先までしびれる。
俺は取り返しのつかない赤い顔で王を見上げたが、予想の通りに酷薄な笑みを浮かべた男がいた。
「やっとこちらを向いたか」
黒いものを含んだ声音だった。
わなないたあとで、快感とも恐怖とも違う生理的な涙がこぼれた。ゆがめられた顔に満足したのか、青の王は「おまえはそういう表情が一番似合う」と言った。
簡単にもてあそばれる自分が、みじめだった。
「愛情に飢えた人間は、物足りないほど簡単に落ちる。少しばかり優しくされたからと、素性もわからぬ者たちに妹を託したのは、確かにおまえの罪だ」
言葉の全部が針のようだ。
「うっ、うえっ」
本能的に身体が男を拒否したが、押し返す腕は、赤ん坊ほどの力も入らなかった。
身体にだったら、なにをされてもあきらめられた。心の一番やわらかいところをえぐり取られて、俺は声を上げて泣いた。
死んだらいいのにと願う。青の王は俺の髪にくちびるをうずめて、小さく笑った。
「ヒソク、倍ほど生きている男を手玉に取るつもりなら、気を散らしても抱いてもらえるとうぬぼれるのはやめろ」
やがて泣き声を聞くのにも飽きたのか、処女のようにこわばった身体を押し開いて行為をはじめた。
明け方の、うっすらとした明かりの中で目が覚めた。
人の気配にぎくりとしたけれど、かたわらに横たわっているのは、昨夜さんざん見た顔で、俺は身体を少しだけ離した。
背を向けて外をながめる。まだ薄暗く鳥の鳴き声もしない静かな朝だったけれど、部屋の外には侍従が控えている気配がする。
王の部屋で眠ることを許されるとは思わなかった。
はあ、とため息をついて、青の王が目覚める前に部屋へ戻ろうと思いついて上体を起こした。
服を着ていなかったのは初めてのことで、一瞬言葉を失う。宮殿に来てからはそれまでの習慣が麻痺しているなと、あらためてうんざりした。
ふと違和感を覚えて、もう一度見下ろした身体はどこかがいつもとは違った。
「え、ティンクチャーが」
ない。胸から青い羽のしるしが消えている。浅黒い肌は王宮に来る以前のもので、久しぶりに俺だけの色だった。
呆然としてしばらくぽけっとそれを見つめたあとで、言いようのない悪寒が背筋をかけあがってきた。
身体がふるえだして止まらなくなる。
俺は眠っている青の王を見た。
そうして、すぐそばについていた自分の手に視線をうつした。
力を込めて布を握りしめていた手の甲には、緑のティンクチャーがしるされていた。
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