5人の王(恵庭/ill.絵歩)公式サイト@ダリアカフェ

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「すぐに水浴び場にお連れして。私はヒソク様が見つかったと、シャーにお伝えしてきます」
 ひとりの侍女が他の者に指示して、その場から離れようとしたけれど、動きが止まった。
 頭を下げたのを見て、他の者もそれにならう。青の王はそれにかまわず近づいてきて、俺の服をつかみあげた。
「おまえにはルリの食事の支度をすることは許したが、自由に出歩く権利まで与えたわけではない」
「すみません」
「血の匂いがするな」
 服にとんでいた動物の血痕を見つけられて、俺はそれで言い訳する道を失った。
 二の腕をつかまれて引きずられる。
「お、お待ちください、シャー。まだヒソク様の用意が整っておりません」
 青の王は足を止めて、「時間がない」と言った。
 声が氷みたいにひんやりとしていて、俺は背筋がびりびりとふるえるのを感じた。
 乱暴に引き寄せられて、耳の骨に噛みつかれる。
「おまえなら手などかけなくとも、受け入れられるだろう?」
 疑問ではなくて、命令の口調だった。


 後ろからつきあげられる刺激は強くて、俺はあえぎ声を抑えるために、手でくちを押さえた。
 鼻孔が甘ったるい匂いで満たされる。
 中途半端に引き抜かれると、咥えていた穴がひくひくと物欲しげに収縮して、先端しか埋め込まれていないことをかなしがった。
「う、うぅん」
 焦れて身体を動かしたが、狭いところは、上手く性器を受け入れようとしなかった。
 思い通りにならなくて、涙がほおに流れた。両手で腰をつかまれると、ねじこまれて、寝台に身体を押し付けられる。
 不自由な格好でゆさぶられて、それでも、目が回るほど気持ち良さを感じた。
「集中しろ」
 ぐっと髪を引っ張られる。
 つながったまま、身体を反転させられるのは、意識をとばしかけていた俺への嫌がらせだった。
 仰向けにさせられると、嫌でも捕食者の姿が目に入ってしまう。
「だらしない顔をしている。おまえは快感に弱いな」
 半裸の男は、整った顔に不釣り合いな、ぎらつく目をしていた。
 腕を引いて起こされ、王の身体をまたぐように座らせられる。自分の身体の重みで腰が沈んで、根元まで飲みこんだ。
 あわててひざを立てたが、両手で太ももをつかまれて、遠慮なく引き寄せられた。
「やああっ」
 せっかく集めた気持ち良さが、痛みで消え失せた。体格のいい男に向かい合わせで抱かれるのは、痛みしか生まない。
 今日はあまりアンバルを嗅がされていないので、痛みで身体がはねた。つながっているところから、黄味がかった液体に血が混じって流れ出てくる。
「も、許してください」
 わななく声を聞いて、青の王は酷薄に笑った。
「そういう言い方が、男を誘うとわかっているのなら、おまえは側女に向いている」
 こんな男は死んだら良いのにと、思った。
 前後にゆさぶられると、めいっぱいまで奥をかきまぜられて、強烈な痛みでぼろぼろと涙がこぼれた。
「あ、あ、いやぁ」
 少しでも逃げようと、相手の腹の上に両手をついた。青の王は、わずらわしそうに俺の手首をつかんだ。
 ねじりあげられて、きつくひもでしばられる。寝台のまわりを囲う布をくくっていた、粗く編まれた麻のひもだった。
 ひもは俺の首を一周して、また手首で結ばれた。祈りを捧げるような格好で、動けなくなる。
 腕を動かせば首がしめあげられる。噛みしめた奥歯が、ガチガチと音を立てる。逃げ場のないおそろしさに、死を思い浮かべた。
 少しゆすられただけで、ひもがのどにくいこんで、緊張で身体がこわばった。
「はず、外して、ください」
「怖がるな。せいぜい意識を失うくらいだ。これくらいしなければ、おまえは自分のことしか考えられないだろう」
 男は楽しそうにして、不意打ちのように腰の動きを速めた。
「んんっ。あ、はあっ」
 前立腺をかすめながら追い立てられると、体中に鳥肌が浮き上がって、目の前が白くなる。
 抽挿を繰り返されれば、中から油が溶けだして、強い甘いにおいが広がった。
 内側には、アンバルをたくさん塗り込められていた。今さらのように、やわらかくなった皮ふがうごめいた。
「は、ああ」
「勃ってきたな。慣れるのが早い」
 油で滑りの良くなった手で性器をなでられると、痛みを忘れるくらいの刺激が生まれた。寒気に似た快感がかけあがってきた。
 顔をのけぞらせると、首のひもがしまった。
 恐怖で中のものをぎゅっとしめつけた。刺激の強いところばかりを意図してえぐられると、息苦しささえ、甘いものに変わってくる。
「抜けないように腰を浮かせてみろ」
「え、あ」
「早くしろ」
 ひざを寝台につけて、尻を浮かせてみるが、力が入らないのでなかなかくさびは抜けなかった。
 慎重にずるりと大きなものを内側から引き抜いていくと、排泄にも似た感覚に身体中の毛が逆立った。
「あ、ん」
「そのままでじっとしていろ」
 中途半端に動きを止められ、いっぱいに広げられたままの格好でいるよう命じられる。
 体の内側で、とろけたように熱くなっていた性器は、外気にさらされても熱気をまとっていた。
 今すぐにでも、腰を落として埋め直したい。急激な欲望が、胸のうちにわいてくる。
 勝手にできるわけもなくて、気を張ろうとしたが、内股がふるふるとふるえた。
 胸の前で組んでいた手を、ひたいに押し当てて耐える。
「腰を落としていいぞ。動いて私をいかせてみろ」
 許しに身体は反応した。ゆっくりとすべてを飲み込みながら、声を上げるのを耐えた。
 もどかしいやり方でさえ、まぶたの裏がチカチカとした。くちをひらけば、みっともない声が出そうだった。
 ぐっと腰を引きつけられれば、さきほどと同じ手ひどいやり方だったのに、気持ち良さが頭まで貫いた。
「ひあ、っいい」
「まだ出すな。こっちが先だ」
 性器をきつく握られて、せきとめられる。いかせてほしくて、夢中になって腰を動かしたが、身動きのとりづらい格好では役に立たなかった。
「ん、あっ」
 腰を上下させて弱いところにあたるようにこすりつけるけれど、自分の動きだけでは強い感覚は得られなくて、生殺しのような状態が続く。
 からかうように裏側のすじを指でなぞられて、感じやすい部分への刺激に耐えきれなくなった。
 無意識に手を動かそうとした。縛めがのどにくいこむ。苦しくてあえいだ。
「さわってほしいなら言ってみたらどうだ」
「して、くれないのに」
 くちびるをふるわせながら抗議すると、青の王は目を細めた。
「そう思うか?」
 あざけるような笑みに、頭が沸騰しそうになった。
 王の手にこすりつけるようにした。手が離れそうになると、誘われるように腰が動いた。
「あ……あぁ」
「まだ言葉を聞いていない」
 身体をつなげているはずなのに、熱など帯びていない平静さで、青の王が俺を見上げていた。
 亀頭に爪がくいこむほど握りつぶされて、それでも期待している自分自身のみじめさに泣いた。 
「さわって、ください」
「可愛げがない。もう一度言ってみろ」
 わなわなとふるえる。くちびるを噛んで、「おねがい」と言った。
「さわって、なんでも……しますから。シャー、さわってください。お願いします」
 とぎれとぎれの懇願に、青の王は「悪くない」と笑った。
 強弱をつけて性器をしごかれる。丸いふくらみまでまとめてしだかれて、目まいがするほどのその感覚にすがった。
「ヴァートの悪癖を知っているか?」
「ヴァー……ト?」
「死んだ緑の王は、美しい少年を買い集め、これを切り落として、女として扱っていた。男としての器官がなくなれば、少女のように大人しくなる。おまえの気の強さも薄れるかもしれないな」
 楽しそうな声に、すうっと熱が冷えた。性器にふれている手が、ひどく冷たく感じられた。

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