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アージェントが破片を踏みつけると、ぐしゃりと嫌な音がした。
助けられたはずなのに、背筋がぞわりとした。
「シアンはまだなにが起きたかわからないようだ。教えてやれ、優しい近衛隊長がこれまで部下をどんな目で見ていたのか」
「違う」
「そうだな、はじめは違ったんだろう。育ての親のように愛情深く見守り、俺には『シアンが馬鹿な兵たちの手 籠 めにされないよう見張っていろ』とまで命じた。庇 護 欲はいつから、変質した?」
「……違う!」
「こいつが死にかけて、手も出さずにみすみす死なせるのが惜しくなったか? それとも初めから、この時を待っていたのか」
「お前も同じ穴のむじなだろう!? 兵のあいだでは、お前の女だとうわさされている。わたしの耳には入らないとでも思ったのか!?」
ふたりの視線が自分に集まっても、シアンは声も出せずにいた。
腹の傷から、じわりと血があふれ出ていくのを感じる。真っ白な布に赤い染みが広がる。
アージェントは、横たわったシアンの左耳の飾りにふれた。
「俺の女にすれば、馬鹿どもへの牽 制 になる」
「馬鹿な……!」
「シアンを喰ったことで、腹を立てていたのか。その怒りは俺に向くだろうと思っていたが、まさかシアンを襲うほうへ転がるとは思わなかった。恥ずかしくないのか、バルナス」
「……女のような顔をして誘うからだ。こいつが悪い」
「安心しろ、今夜のことは口外しない。おまえにはまだ隊長でいてもらわなくてはならないからな」
耳を疑った。
バルナスは顔をゆがめ、初めて余裕のある様子を見せた。
「口外すれば、自分も困るから黙っているだけだと認めろ」と、せせら笑う。
「他の宮殿に送り込んでいる間者の全容は、つかめていないはずだ。サトラップから流れている資金も、わたしが近衛隊長を降りれば集まらなくなる。だが、シアンはもう取引材料にはならない。お前の手 垢 がついた男娼など、王の子とは認めない!」
アージェントにほおをなでられて、それまで凍りついていた身体がひくりと震えた。
華奢な娘をいたわるような、やさしいさわり方だった。ぞっとして、目の前が真っ暗になった。
「シアンが女に見えるか? おまえに見えているのは、もっと別の者だろう。バルナス」
「……なにを言っている」
「サルタイアーに勝利すれば、青の王はパーディシャーとなり、手柄は本隊長であるおまえのものだ。俺はあと一年で王宮を去る。それまでが、どうして待てない? 欲張るとすべてを手放すことになるぞ」
アージェントの手が、シアンの髪をすいた。
はらはらと、銀色の髪がほおにこぼれ落ちる。
「英雄の名も権力も、美しい〈白銀王〉も、その時、おまえのものになる」
バルナスの表情は変わらなかった。けれど、怒り狂っていた気配がすっと冷めた。暗がりに浮かぶふたつの目に、まったく違う毛色の興奮がともる。戦場にただよう寒々しさが、ひとつの男の形をしていた。
そばにはいたくないと、本能がさわぐ。腕を縛られたまま後ずさろうとしたが、バルナスの冷たい手が腰にふれ、ひきちぎるように強くつかまれた。叫ぼうとしたが、アージェントの手でくちを塞がれて叶わなかった。アージェントはそのままシアンの身体を引き寄せた。バルナスの手が離れる。目の前でエサを奪われたバルナスは、アージェントに怒りのまなざしを向けたが、シアンの服が両ひざまで下げられると、びくりとして手を浮かせた。
尻も脚もむき出しになった。
すべてが馬鹿げていると思ったし、すべてが恐ろしかった。暗闇よりも目が慣れた今のほうがずっと怖かった。
脚の付け根にアージェントの手がふれ、ためらいなく性器をつかまれる。
誰にもさわられたことのない場所を、無遠慮にしごきたてられて、頭がくらりとした。嫌悪からの悲鳴は、くちどころか鼻まで塞がれているせいで、掠れた吐息にしかならなかった。
「……っ、ふ」
もらした弱々しい声を、バルナスは聞き逃さなかった。生唾を飲み込むいやらしい音がして、シアンの身体は震えだした。
幼い頃から顔を合わせ、剣のてほどきをしてくれて、筋がいいと褒めてくれたバルナスは、食い入るように自分を見つめていた。獣の目だと思った。
乱暴に袋ごともみしだかれて、痛みに生理的な涙が浮いた。太ももを引きつらせて、こらえきれずに嗚咽をもらすと、手の力が少しだけ弱まった。
すい込む空気が足りなくて、視界がかすんでいく。
爪先までしびれて、腹に込めていた力が抜け落ちた。
シアンが大人しくなると、性器を苛めていた手が柔らかくなった。くびれに指をかけられて、ぞわりとした快感が、背筋にはしった。
異常な状況だとわかっているのに、擦られれば反応を示す。知りたくない感覚を、覚え込ませるように植え付けられて、シアンは混乱した。
それを、見世物にされている。
荒い息が絶えず聞こえた。バルナスは前かがみになり、自らの屹 立 したものをしごきたてていた。
『バルナスのための見世物』であることはわかった。恥ずかしい姿を見られていることも、気持ちの悪さにも耐えられなくて、目をつぶった。
「う……、あぁ」
強弱をつけて追い上げられて、抵抗するすべもなく精を放った。
息を封じていた手が外され、シアンはくたりと倒れ込んだ。くちびるにむっとする匂いのものが塗りつけられる。
指で口内にまで塗られて、自分の精液を少しだけ飲み込んだ。溶けてしまいそうなほど眠くて身体が重い。
「シアンが欲しければ、自分の役割を忘れるな」
たった今、自分をおとしめた男の腕に抱き上げられるのがわかったが、熱に浮かされるように眠りに落ちた。
「どうして罷 免 したらいけないんだよ!」
エールの怒鳴り声が聞こえて、飛び起きた。身体を貫くような痛みに、背中を丸めて奥歯を噛みしめる。どこもかしこも痛くて、今まで眠れていたことが嘘のように頭がはっきりした。
どのくらい意識を失っていたのか、まだまわりは暗く、テントの外ではオレンジ色の光が揺れていた。
見まわすと、薄暗い幕舎の中だった。誰もいないことを確かめても、布を握りしめたこぶしが、勝手に震えてしまった。首筋を、冷や汗が流れ落ちる。
「バルナス隊長なんだろ! 兄さんがシアンを連れて、あの人の幕舎から出てきたって、兵から聞いたんだ。あの人を辞めさせられないなら、王の権限で今すぐシアンを除隊させる。二度と近づかせたりしない」
「離隊するかどうかは、シアンが自分で決めることだ」
「兄さんは腹が立たないの!? バルナス隊長は、以前からシアンを嫌な目で見ていた。シアンを自分のものみたいに言って……兄さんは気のせいだって言ってたけど、きっとはじめから、こうするつもりだったんだ!」
エールは、彼らしくない取り乱した声で叫んだ。
それが自分のせいだと、シアンはようやく記憶が戻ってくる頭で思い当たった。声の主を探して幕舎を出たが、姿は見えなかった。
「バルナスのことは俺に任せろ。王宮を去るまでにはどうにかする」
「自分が王宮を出ていくまでにって、兄さんはそればかりだ。どうしてなんでも、自分の都合のいいように割り切ってしまうの。今の、シアンの気持ちはどうなるんだよ!」
「シアンはおまえを守るすべを学ぶため、自分の意思で近衛に入った。青の王の側近として、おまえの盾になる気でいる。この程度のことで、ゆらぐような弱い男ではない」
「……盾? なんだよそれ、本気で言ってるの?」
「同じように、バルナスの力も、パーディシャーになるためになくてはならない。サルタイアーに勝利するまで、辞めさせることはできない。あと少しだと、おまえにもわかるだろう」
「兄さんは、おかしい! 僕の望みはそんなことじゃないって、何度言えばわかるんだよ!? 僕はシアンをこんな目に遭わせてまで、パーディシャーになんかなりたくない!」
「おまえの望みを叶えたいわけじゃない。俺たちは青の王に仕え、必要なことをしている。おまえも王としての役割を果たせ。泣きわめくことが、おまえのすべきことか?」
エールはもう一度、「兄さんは、おかしい」と言った。かすれた声は弱々しく、涙まじりだった。
「僕はいやだ」
「気づかなかったふりをしてやれ。男に屈辱的な目に遭わされたことをおまえに知られれば、シアンの受ける傷のほうが大きい」
アージェントの声は、とても真 摯 に聞こえた。誠実な声で、愛する者を騙せる人間がいることを、シアンはあらためて信じられないと思った。
「バルナスを罰すれば、シアンが犯されたことまで兵に広まる。自尊心の高いあいつには、耐えがたいことだ。あいつのために、我慢しろ」
「……そんな言い方は、卑怯だ」
シアンは悟った。
バルナスの許されない諜 報 活動や、裏金の流用、アージェントがまわりの人間をシャトランジの駒のように操っていることは、王の耳に入ることはない。ニゼルが死んだことも、殺したのは叔父だということも、からっぽの墓も、エールは永遠に知ることはない。
アージェントの愛情は、エールさえ守れれば、他の誰を傷つけてもゆらがない。
うぬぼれていた。王宮を去ることさえ知らされていなかったのに、必要とされていると思っていた。アージェントにとって、シアンの気をひくことは、都合よく駒を動かすための手段でしかなかった。『目』が大事だとふるまったのは、それが効果的だと知っていたからだ。
きっとまたシアンに嘘をつく。
バルナスとのことも、エールのためだと、優しく諭すのだろう。顔色ひとつ変えずに嘘をつかれるような、ただの駒にすぎなかったのに、踏みにじられるまでそれに気づかなかった。
アージェントの〈特別〉はたったひとつだ。同じものになんか、なれるはずがなかったのだと、絶望の淵 で知った。
助けられたはずなのに、背筋がぞわりとした。
「シアンはまだなにが起きたかわからないようだ。教えてやれ、優しい近衛隊長がこれまで部下をどんな目で見ていたのか」
「違う」
「そうだな、はじめは違ったんだろう。育ての親のように愛情深く見守り、俺には『シアンが馬鹿な兵たちの
「……違う!」
「こいつが死にかけて、手も出さずにみすみす死なせるのが惜しくなったか? それとも初めから、この時を待っていたのか」
「お前も同じ穴のむじなだろう!? 兵のあいだでは、お前の女だとうわさされている。わたしの耳には入らないとでも思ったのか!?」
ふたりの視線が自分に集まっても、シアンは声も出せずにいた。
腹の傷から、じわりと血があふれ出ていくのを感じる。真っ白な布に赤い染みが広がる。
アージェントは、横たわったシアンの左耳の飾りにふれた。
「俺の女にすれば、馬鹿どもへの
「馬鹿な……!」
「シアンを喰ったことで、腹を立てていたのか。その怒りは俺に向くだろうと思っていたが、まさかシアンを襲うほうへ転がるとは思わなかった。恥ずかしくないのか、バルナス」
「……女のような顔をして誘うからだ。こいつが悪い」
「安心しろ、今夜のことは口外しない。おまえにはまだ隊長でいてもらわなくてはならないからな」
耳を疑った。
バルナスは顔をゆがめ、初めて余裕のある様子を見せた。
「口外すれば、自分も困るから黙っているだけだと認めろ」と、せせら笑う。
「他の宮殿に送り込んでいる間者の全容は、つかめていないはずだ。サトラップから流れている資金も、わたしが近衛隊長を降りれば集まらなくなる。だが、シアンはもう取引材料にはならない。お前の
アージェントにほおをなでられて、それまで凍りついていた身体がひくりと震えた。
華奢な娘をいたわるような、やさしいさわり方だった。ぞっとして、目の前が真っ暗になった。
「シアンが女に見えるか? おまえに見えているのは、もっと別の者だろう。バルナス」
「……なにを言っている」
「サルタイアーに勝利すれば、青の王はパーディシャーとなり、手柄は本隊長であるおまえのものだ。俺はあと一年で王宮を去る。それまでが、どうして待てない? 欲張るとすべてを手放すことになるぞ」
アージェントの手が、シアンの髪をすいた。
はらはらと、銀色の髪がほおにこぼれ落ちる。
「英雄の名も権力も、美しい〈白銀王〉も、その時、おまえのものになる」
バルナスの表情は変わらなかった。けれど、怒り狂っていた気配がすっと冷めた。暗がりに浮かぶふたつの目に、まったく違う毛色の興奮がともる。戦場にただよう寒々しさが、ひとつの男の形をしていた。
そばにはいたくないと、本能がさわぐ。腕を縛られたまま後ずさろうとしたが、バルナスの冷たい手が腰にふれ、ひきちぎるように強くつかまれた。叫ぼうとしたが、アージェントの手でくちを塞がれて叶わなかった。アージェントはそのままシアンの身体を引き寄せた。バルナスの手が離れる。目の前でエサを奪われたバルナスは、アージェントに怒りのまなざしを向けたが、シアンの服が両ひざまで下げられると、びくりとして手を浮かせた。
尻も脚もむき出しになった。
すべてが馬鹿げていると思ったし、すべてが恐ろしかった。暗闇よりも目が慣れた今のほうがずっと怖かった。
脚の付け根にアージェントの手がふれ、ためらいなく性器をつかまれる。
誰にもさわられたことのない場所を、無遠慮にしごきたてられて、頭がくらりとした。嫌悪からの悲鳴は、くちどころか鼻まで塞がれているせいで、掠れた吐息にしかならなかった。
「……っ、ふ」
もらした弱々しい声を、バルナスは聞き逃さなかった。生唾を飲み込むいやらしい音がして、シアンの身体は震えだした。
幼い頃から顔を合わせ、剣のてほどきをしてくれて、筋がいいと褒めてくれたバルナスは、食い入るように自分を見つめていた。獣の目だと思った。
乱暴に袋ごともみしだかれて、痛みに生理的な涙が浮いた。太ももを引きつらせて、こらえきれずに嗚咽をもらすと、手の力が少しだけ弱まった。
すい込む空気が足りなくて、視界がかすんでいく。
爪先までしびれて、腹に込めていた力が抜け落ちた。
シアンが大人しくなると、性器を苛めていた手が柔らかくなった。くびれに指をかけられて、ぞわりとした快感が、背筋にはしった。
異常な状況だとわかっているのに、擦られれば反応を示す。知りたくない感覚を、覚え込ませるように植え付けられて、シアンは混乱した。
それを、見世物にされている。
荒い息が絶えず聞こえた。バルナスは前かがみになり、自らの
『バルナスのための見世物』であることはわかった。恥ずかしい姿を見られていることも、気持ちの悪さにも耐えられなくて、目をつぶった。
「う……、あぁ」
強弱をつけて追い上げられて、抵抗するすべもなく精を放った。
息を封じていた手が外され、シアンはくたりと倒れ込んだ。くちびるにむっとする匂いのものが塗りつけられる。
指で口内にまで塗られて、自分の精液を少しだけ飲み込んだ。溶けてしまいそうなほど眠くて身体が重い。
「シアンが欲しければ、自分の役割を忘れるな」
たった今、自分をおとしめた男の腕に抱き上げられるのがわかったが、熱に浮かされるように眠りに落ちた。
「どうして
エールの怒鳴り声が聞こえて、飛び起きた。身体を貫くような痛みに、背中を丸めて奥歯を噛みしめる。どこもかしこも痛くて、今まで眠れていたことが嘘のように頭がはっきりした。
どのくらい意識を失っていたのか、まだまわりは暗く、テントの外ではオレンジ色の光が揺れていた。
見まわすと、薄暗い幕舎の中だった。誰もいないことを確かめても、布を握りしめたこぶしが、勝手に震えてしまった。首筋を、冷や汗が流れ落ちる。
「バルナス隊長なんだろ! 兄さんがシアンを連れて、あの人の幕舎から出てきたって、兵から聞いたんだ。あの人を辞めさせられないなら、王の権限で今すぐシアンを除隊させる。二度と近づかせたりしない」
「離隊するかどうかは、シアンが自分で決めることだ」
「兄さんは腹が立たないの!? バルナス隊長は、以前からシアンを嫌な目で見ていた。シアンを自分のものみたいに言って……兄さんは気のせいだって言ってたけど、きっとはじめから、こうするつもりだったんだ!」
エールは、彼らしくない取り乱した声で叫んだ。
それが自分のせいだと、シアンはようやく記憶が戻ってくる頭で思い当たった。声の主を探して幕舎を出たが、姿は見えなかった。
「バルナスのことは俺に任せろ。王宮を去るまでにはどうにかする」
「自分が王宮を出ていくまでにって、兄さんはそればかりだ。どうしてなんでも、自分の都合のいいように割り切ってしまうの。今の、シアンの気持ちはどうなるんだよ!」
「シアンはおまえを守るすべを学ぶため、自分の意思で近衛に入った。青の王の側近として、おまえの盾になる気でいる。この程度のことで、ゆらぐような弱い男ではない」
「……盾? なんだよそれ、本気で言ってるの?」
「同じように、バルナスの力も、パーディシャーになるためになくてはならない。サルタイアーに勝利するまで、辞めさせることはできない。あと少しだと、おまえにもわかるだろう」
「兄さんは、おかしい! 僕の望みはそんなことじゃないって、何度言えばわかるんだよ!? 僕はシアンをこんな目に遭わせてまで、パーディシャーになんかなりたくない!」
「おまえの望みを叶えたいわけじゃない。俺たちは青の王に仕え、必要なことをしている。おまえも王としての役割を果たせ。泣きわめくことが、おまえのすべきことか?」
エールはもう一度、「兄さんは、おかしい」と言った。かすれた声は弱々しく、涙まじりだった。
「僕はいやだ」
「気づかなかったふりをしてやれ。男に屈辱的な目に遭わされたことをおまえに知られれば、シアンの受ける傷のほうが大きい」
アージェントの声は、とても
「バルナスを罰すれば、シアンが犯されたことまで兵に広まる。自尊心の高いあいつには、耐えがたいことだ。あいつのために、我慢しろ」
「……そんな言い方は、卑怯だ」
シアンは悟った。
バルナスの許されない
アージェントの愛情は、エールさえ守れれば、他の誰を傷つけてもゆらがない。
うぬぼれていた。王宮を去ることさえ知らされていなかったのに、必要とされていると思っていた。アージェントにとって、シアンの気をひくことは、都合よく駒を動かすための手段でしかなかった。『目』が大事だとふるまったのは、それが効果的だと知っていたからだ。
きっとまたシアンに嘘をつく。
バルナスとのことも、エールのためだと、優しく諭すのだろう。顔色ひとつ変えずに嘘をつかれるような、ただの駒にすぎなかったのに、踏みにじられるまでそれに気づかなかった。
アージェントの〈特別〉はたったひとつだ。同じものになんか、なれるはずがなかったのだと、絶望の
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