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言いなり著:丸木文華

 入り口の他にも、処女があるのか。いや、そもそも、男に処女などと言えるのだろうか。
 突かれる度に意識が飛びそうになる。ケイ君、と呼ぶ声が昔の声と重なる。今、自分が誰に抱かれているのか、わからなくなる。
「ケイ君、ケイ君、ああ、可愛いよ、好き、好きだよ、俺のケイ君っ」
「ううっ、はあっ、ああっ、あう、う、つよ、し」
 剛は疲れることを知らないようにいつまでも激しく腰を振っている。ぐちゃっぐちゃっ、ぶぽっずぼっ、と聞くに耐えないような音が連綿と鳴り響く。
 あまりにも大きく忙しなく動くので、必死で剛の背中にしがみついていないと過剰に揺すぶられて視界がぶれる。ケイ君、ケイ君、と呪いのように叫び続ける合間にやたらめったらに舌を絡ませ、上も下も粘膜が擦れ合って、そのうちに溶けてしまいそうだ。
「ああ、あああっ、ケイ君、ケイ君っ」
 ひと際剛が大きく吠え、深く突っ込んだままぶるりと大きく痙攣する。途端に、奥に剛の夥しい量の精液が噴射され、ぶぼっと大きく音が鳴って肉の輪の合間から粘液が飛び出してくる。
「て、てめ……中に、出しやがったな」
「あ、ごめん、夢中で」
 剛は赤い顔を汗みずくにして笑いながら、愛おしそうに圭一の口を吸う。
 射精したにもかかわらず、中に入っているものは萎える気配を見せない。精液のぬめりを借りて抽送は一層楽になり、気づけば剛はまた腰を振っている。
「くそっ、ああ、もう、いやだ、剛、もう、っ……」
「ああ、気持ちよすぎて収まんないよ、ケイ君」
 圭一の拒絶など聞かずに、剛は陶然と潤んだ目をしていつまでも動いている。
 圭一は自分が射精したのかどうかわからなかった。ただ逃げようのない乱暴な快感に翻弄されて、剛にしがみついて喘いでいるしかない。
 こんなにうるさく騒いでいたら、いくら防音がきいているとは言え、隣から苦情が来ないだろうか。そんなことを考えながら、圭一は剛の欲望を受け止めるのに精一杯で、なす術もなく、渦潮に飲まれて溺れるように、暴力的な絶頂感を全身で味わっていた。

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