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「ああもうやだ……冷めるから食べよう、俺の大好きな真人君」
「そうですね、俺が愛してる世さん」
「俺が世界一愛してるまこまこ君もスープ飲めよ」
「俺の宇宙一愛しい世にゃんさんもオムライス先にどうぞ」
ぶふっ、と吹きながらもおたがい顔が真っ赤だからおっかしくてしかたない。スプーンを持ったまま腹を抱える俺の前で、真人もスープを片手に目もとを押さえて肩を揺らしている。
「なにしてんだよ、この公共の場で、父子が遊んでる神聖な公園でっ。ったくもうー……」
「世さんが始めたんでしょうが」
「真人が意地になるのが悪いんだろ?」
「いや、意地とかではなくほんとこれはゆずれない真実なんで」
ふたりでくすくす喉の奥に笑いをとどめながら食事をした。
オムライスは真人が細かく切ってくれた食材を俺が指示通りに炒めてチキンライスを作った。とろとろ玉子部分は技がいるからと真人が作ってくれて完成したんだ。まずは端っこを切って口に入れる。チキンライスの野菜全部に味が染みていて、玉子と完璧に調和して美味しすぎる。
「すごい、これだけで美味い、真人のチキンライスすごい、お弁当なのに玉子もとろっとろ」
「チキンライスは世さんが作ったでしょ」
「味つけてくれたのは真人だもん、俺は掻き混ぜてただけでなにもしてないよ」
次は真人がチューブに詰めてくれた付属のケチャップを手にとった。
「……なんて書くんですか?」
「え、なにか書くべき?」
「いえ、世さんにまかせますけど」
うーん……たしかに真人もオムライスを作ってくれるときいつもなにか書いてくれるなあ。
俺の愛の深さを示すいい機会だぞ、と気合いを入れて、ふんすとケチャップ絵を描いていく。
「どうだ」
「……。画伯ですね」
「なんだと」
真人がくれたお弁当箱にいるクマちゃんを真似してふたり描いてみた。〝LOVE MAKO〟の文字も添えて。
「……いや、気持ちはすごく伝わります」
真人が左手で口もとを押さえて、俺の不器用によれたクマちゃんと告白を眺めている。
「本当か? 俺が世界一、宇宙一真人を愛してる気持ち伝わってる……?」
「伝わってますよ、ちょっと泣きそうなぐらい」
ず、と真人が洟をすする音がした。「寒いからじゃなくて?」と苦笑いしても、「違いますって」と否定して怒りつつ笑ってくれる。
「そっか。俺も真人に泣くほどの幸せいっぱいもらってきたから、やっとすこし返せたかな」
人間として欠けた部分がたくさんあるからこそ、俺は真人がくれた幸福のおかげでいろんな学びと喜びを得て生きられたんだと思う。
真人がくれた。クリスマスやバレンタインの楽しみ、誕生日を祝ってもらえる喜び、花火や祭りの感動、お弁当箱――感情を、経験を、すべて与えて幸せな人間にしてくれた。
「あなたのクマちゃんになれて幸せです」
「はは」
ありがとう真人。これからもずっと一生愛しながら、俺も真人を幸せにしていくよ――。
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